Column終活の手引き
終活はいつから始める?
答えは年齢ではなく
「期限」にある2026年の民法改正と、年代別ロードマップ
「まだ早い気がする」「もう遅いのでは」。終活の始めどきに、法律で決まった年齢はありません。ただし、終活の中には期限のあるものがあります。この記事では、やることを期限で三つに分け、今の自分が何から手を付ければよいかを整理しました。2026年6月に成立した成年後見と遺言の制度の見直しや、相続登記の期限など、これから数年で動く制度の日付もまとめています。

Summaryこの記事の要点
- 終活を始める年齢に決まりはありません。早すぎて困ることはありませんが、遅すぎてできなくなることはあります。
- 遺言書や任意後見契約は、作る時・結ぶ時に本人の判断能力が必要です。ここが終活でいちばん先送りしてはいけない部分です。
- 2026年6月に、成年後見と遺言の制度を見直す改正民法が成立しました。施行日はまだ決まっていません。改正を待つ理由にはなりません。
- 2024年4月から相続登記が義務になりました。それより前に相続した不動産も対象で、多くの場合、2027年3月31日が申請の期限です。
- 迷ったら、いつでもできて何度でも直せることから始め、期限のあることは「相談」だけ先に済ませます。
結論
結論:始めどきは年齢ではなく「期限」で決まる
結論から書きます。終活の始めどきは、「何歳か」ではなく「何に期限があるか」で決まります。そして、期限のあることに気づいた時点が、その人にとっての始めどきです。
終活と一口に言っても、中身はさまざまです。持ち物の片付け、財産と契約の整理、葬儀やお墓の希望、医療や介護についての考え、遺言書、家族への言葉。このうち、エンディングノートや片付けは、何歳からでも、何度でもやり直せます。一方で、遺言書や任意後見契約のように、本人の判断能力がしっかりしているうちにしかできないことがあります。終活の「いつから」で本当に気をつけたいのは、こちらです。
調査
実際には、何歳で始めている? 調査の数字の読み方
とはいえ、ほかの人がいつ始めているのかは気になるところです。公表されている調査を二つ見てみます。
| 調査 | 対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| NEXER・SAIKAI&CO (2024年10月) | 全国の男女1,000名 インターネット調査 | 終活を始めるのにふさわしい年代は「70代」36.9%、「60代」31.2%、「50代」11.3%。実際に終活をしている人は16.4% |
| ハルメク 生きかた上手研究所 (2025年2月) | 全国の50〜79歳の男女2,016名 Webアンケート | 終活を「すでに始めている」44.0%、「今後始める予定」33.4%。終活の必要性を感じている人は77.4% |
二つの数字が大きく違う理由
16.4%と44.0%。差が大きく見えますが、これは調査の対象が違うためです。前者は年齢を限らない全国の男女、後者は50〜79歳に限った調査です。終活を意識する人が多い年代に絞れば、すでに始めている人の割合は高くなります。
もう一つ読み取れるのは、「ふさわしいと思う年代」と「実際に始めている年代」が一致しないことです。全国の男女に聞くと、始めるのにふさわしいのは「70代」という答えがいちばん多い。けれど50〜79歳のうち4割以上は、すでに始めています。「まだ70代ではないから」と待っているうちに、同世代の多くはもう動き出している、と読むこともできます。
数字は「目安」として
調査が示しているのは、多くの人がいつ始めているかという傾向です。あなたがいつ始めるべきかの答えではありません。始めどきを決めるのは、次の章で説明する「期限」です。
三つの期限
終活の三つの期限
終活のやることリストは、探すと数十項目も出てきます。順番に並べるより、「いつまでにやらないと困るか」という期限で三つに分けると、優先順位がはっきりします。
本人がしっかり判断できるうちにしか、できないことです。
- 遺言書の作成
- 任意後見契約
- 家族信託などの契約
- 財産の管理を誰かに頼む契約
数か月から数年かかり、体力も要ることです。
- 家の片付け・生前整理
- 不動産の名義や住まいの整理
- 口座・保険・契約の整理
- 葬儀やお墓の検討
いつでも始められて、何度でも直せることです。
- エンディングノート
- 連絡先の一覧
- 医療・介護の希望の整理
- 家族への手紙や動画

なぜ「判断能力」が期限になるのか
法律は、遺言をする人に、遺言をする時点での能力を求めています。民法第963条は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めています。契約も同じで、民法第3条の2は、意思表示をした時に意思能力がなかった法律行為は「無効とする」としています。
任意後見契約は、判断能力が十分なうちに、将来、財産の管理などを任せる人と内容を自分で決めておく契約です。「任意後見契約に関する法律」第3条により、公正証書で結ぶ必要があります。判断能力が低下したあとに使えるのは、家庭裁判所が支援する人を選ぶ法定後見の制度です。誰に任せるかを自分で決められるのは、元気なうちだけです。
遺言は15歳からできる
民法第961条は「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」と定めています。法律の上では、遺言に「早すぎる」年齢はありません。終活は高齢になってからするもの、という思い込みを外すと、始めどきの考え方が変わります。
おすすめの進め方
- 期限のないことから手を動かすエンディングノートや連絡先の一覧は、気軽に始められて、何度でも書き直せます。終活を習慣にする入り口です。
- 判断能力の期限があることは、「相談」だけ先に遺言や任意後見は、すぐに決めきれなくても構いません。専門家や自治体の窓口で選択肢を聞いておくだけで、次に動きやすくなります。
- 体力と時間の期限があることは、少しずつ片付けは「一部屋」「一つの引き出し」から。不動産や口座の整理は、一覧を作るところから始めます。
- 年に一度、全部を見直す誕生日や年末など、日を決めておくと続きます。厚生労働省が「人生会議の日」としている11月30日に合わせるのも一つの方法です。
遺言・後見・信託・税金・不動産は、状況によって適した方法が変わります。実際に進めるときは、弁護士・司法書士・税理士などの専門家や、自治体の相談窓口に確認してください。
法改正
2026年の民法改正 ― 待つべきか、今やるべきか
終活に関わる法律が、これから数年で大きく変わります。2026年6月17日、成年後見と遺言の制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、6月24日に公布されました。法務省の案内をもとに、主な内容と施行の時期を整理します。
遅くとも 2027年6月ごろ遺言の押印を任意にする(押印の任意化など)
公布の日から1年を超えない範囲で、政令で定める日に施行されます。
遅くとも 2028年12月ごろ成年後見制度の見直し
後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲で利用できるようにします。公布の日から2年6か月を超えない範囲で、政令で定める日に施行されます。
遅くとも 2029年6月ごろ保管証書遺言の創設
電子データなどで作成し、法務局で保管する遺言です。システムの改修が必要なため、公布の日から3年を超えない範囲で、政令で定める日に施行されます。
2026年10月現在、具体的な施行日はまだ定められていません。上の時期は、公布の日(2026年6月24日)から数えた最も遅い場合の目安です。最新の情報は法務省のページで確認してください。
「改正を待ってから」は、おすすめしない
「新しい制度が始まってから遺言書を作ろう」と考える方もいるかもしれません。けれど、施行日はまだ決まっておらず、それまでの間にも、遺言書を作るには判断能力が必要だという原則は変わりません。待っている間に体調が変われば、新しい制度も古い制度も使えなくなるおそれがあります。
今ある方式で遺言書を作っておき、新しい制度が始まったら、専門家に相談して見直す。そのほうが確実です。終活は「一度で完成させるもの」ではなく、「見直しながら続けるもの」と考えると、改正の時期に振り回されずにすみます。
動画は遺言の代わりにはならない
新しい保管証書遺言は、電子データなどで作る遺言を法務局で保管する制度です。家族へのメッセージ動画を撮っておくことは大切ですが、動画そのものが法律上の遺言になるわけではありません。詳しくは終活動画とは?撮り方・話す内容・残し方の完全ガイドで説明しています。
相続登記
親の家の名義と、2027年3月31日
もう一つ、日付が決まっている期限があります。相続登記の申請義務です。2024年4月1日から、相続で不動産の所有権を取得した人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました(不動産登記法第76条の2)。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。
見落としやすいのは、2024年4月より前に相続した不動産も対象になることです。法務省によると、施行日より前に始まった相続で、まだ登記をしていない場合の期限は、原則として2027年3月31日です(不動産を相続で取得したと知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)。

終活として確かめておきたいこと
- 今住んでいる家や土地の名義が、誰になっているか(亡くなった親や祖父母の名義のままになっていないか)
- 実家や、遠方にある土地・山林など、ふだん意識していない不動産がないか
- 名義が古いままなら、相続人が誰になるのか、話し合いができる状態か
- 登記済証(権利証)や登記識別情報、固定資産税の納税通知書がどこにあるか
自分の終活を考えるときに、親の代から名義が変わっていない家が見つかることは珍しくありません。名義の整理は、子どもや孫の代に先送りするほど、関わる人が増えて話がまとまりにくくなります。手続きについては、法務局や司法書士に相談してください。
セルフチェック
始めどきのサインとセルフチェック
年齢よりも、暮らしの変化が終活のきっかけになります。次のような出来事があったときは、始めどきのサインです。
| サイン | 例 | 最初にやると良いこと |
|---|---|---|
| 仕事や生活の節目 | 定年・退職、子どもの独立、住み替え | 財産と契約の一覧づくり |
| 身近な人の出来事 | 親や友人を見送った、相続の手続きを経験した | 自分の場合に必要な手続きを書き出す |
| 健康の変化 | 入院、持病の診断、健康診断の結果 | 医療・介護の希望の整理、遺言の相談 |
| 暮らしの変化 | 配偶者を見送った、一人暮らしになった | 緊急連絡先と、頼れる人の確認 |
セルフチェック:当てはまる数を数えてください
- 通帳・保険・不動産の全体を、家族が把握していない
- 自分に万一のことがあったとき、誰に連絡するかを決めていない
- 葬儀やお墓について、希望を誰にも話していない
- 遺言書もエンディングノートも書いていない
- 家や土地の名義を、しばらく確かめていない
- ネット銀行・証券・サブスクなど、スマートフォンやパソコンの契約が多い
- 家の中の物が多く、何がどこにあるか自分でもあいまい
- 持病がある、または健康に少し不安がある
- 親や配偶者を見送ったとき、手続きで苦労した
- 「家族に迷惑をかけたくない」とよく思う
0〜2まず知る
この記事の「三つの期限」を押さえておけば十分です。年に一度、チェックし直してください。
3〜5今月から
「最初の1週間」の表から、できることを一つ選んで始めましょう。
6〜優先して
判断能力の期限があること(遺言・任意後見)と、不動産の名義を優先し、専門家への相談の予約を早めに入れてください。
年代別
年代別ロードマップ
年代は目安です。迷ったら、今の自分に近い年代の行から読んでください。どの年代でも、「三つの期限」の考え方は同じです。
| 年代 | テーマ | やること |
|---|---|---|
| 40〜50代 | 知る・備える | 財産・保険・ローン・カードの一覧づくり/ネット銀行やサブスクなど、デジタルの契約の整理/親の終活と、実家の名義を確かめる |
| 60代 | 整える・決める | 生前整理を本格的に始める/エンディングノートを書き始める/遺言・任意後見を専門家に相談する/葬儀・お墓・医療や介護の希望を整理する |
| 70代 | 形にする・伝える | 遺言書などの書類を整える/保管場所と希望を家族と共有する/物の行き先を決めておく/年に一度の見直しを習慣にする |
| 80代以降 | 見直す・託す | これまでの内容を家族と一緒に読み返す/緊急連絡先・持病・服薬・かかりつけ医を見える場所にまとめる/体調を優先し、できる範囲で進める |

どの年代でも共通して大切なのは、判断能力の期限があることを、体調に不安が出る前に一度は検討しておくことです。40代・50代なら、自分のことと同時に、親の終活を一緒に考える時期でもあります。
行動計画
最初の1週間・1か月・3か月
「何から手を付ければいいか分からない」という方は、この順番で進めてください。一つできたら、それで十分な前進です。
| 期間 | やること | ゴール |
|---|---|---|
| 最初の1週間 | 不安なことを三つ、紙に書き出す/通帳・保険証券・印鑑の場所をメモする/連絡先の一覧の下書きを作る | 今の状態を見える形にする |
| 1か月 | エンディングノートを1ページ書く/持ち物の見直しを一部屋だけ始める/家や土地の名義を確かめる/家族に「終活を始めた」と伝える | 家族と話せる状態にする |
| 3か月 | 専門家や自治体の窓口に相談する/葬儀・お墓・医療の希望を整理する/家族への気持ちを手紙や動画で残す | 決めることを決める |
気持ちを残す
書類では残せないものを、どう残すか
ここまでの多くは、手続きと情報の整理です。けれど、家族があとで本当に知りたくなるのは、「本人はどんな気持ちだったのか」であることも少なくありません。
| 書類で残すもの | 声と映像で残すもの | |
|---|---|---|
| 役割 | 手続きを正確に進める | 気持ちを伝え、家族の心を支える |
| 代表例 | 遺言書、エンディングノート、財産の一覧 | 家族へのメッセージ動画、ビデオレター、手紙 |
| 伝えられること | 何を、どうしてほしいか | なぜそう考えたか、ありがとう |
| 期限 | 判断能力の期限があるもの・ないもの | 話す力と気持ちに余裕があるうち |
おすすめは、両方を残すことです。遺言書で財産の分け方を決め、動画で「そう決めた理由」を自分の声で話しておけば、家族は本人の思いを手がかりに受け止めることができます。声と表情は、話せるうちにしか残せません。これも、もう一つの期限です。
撮り方や話す内容は、終活動画とは?撮り方・話す内容・残し方の完全ガイドで、質問リストと台本の例を付けて紹介しています。
家族の方へ
親に終活をすすめるときの切り出し方
「親に終活を始めてほしいけれど、言い出しにくい」という方も多いと思います。切り出し方で、受け止められ方は大きく変わります。

Avoid避けたい言い方
- 「そろそろ準備したら?」
- 「もしものとき、困るのは私たちなんだよ」
- 「遺言書だけは書いておいてね」
Better伝わりやすい言い方
- 「昔の話を、もっと聞かせてほしいな」
- 「大事にしている物、どうしたいか教えて」
- 「元気なうちに、一緒に整理しておこうか」
実家の名義や、遺言・任意後見のように期限のある話は、いきなり持ち出すと身構えられがちです。まず思い出や希望を聞き、その流れで「家のことはどうなっているの?」と尋ねると、親のペースで話しやすくなります。
よくある質問
よくある質問
結局、終活は何歳から始めるのがいいですか?
法律で決まった年齢はありません。調査では60代・70代を挙げる人が多いものの、遺言書や任意後見契約のように判断能力が必要なことは、体調に不安が出る前に検討しておくのが安心です。
40代・50代で始めるのは早すぎますか?
早すぎることはありません。財産と契約の一覧をつくる、親の終活と実家の名義を確かめるなど、備えの段階として取り組むと役に立ちます。
2026年の民法改正を待ってから、遺言書を作るべきですか?
施行日はまだ決まっていません。待っている間も、遺言書を作るには判断能力が必要です。今ある方式で作っておき、新しい制度が始まったら専門家に相談して見直す方法が確実です。
今ある成年後見の制度は、すぐになくなりますか?
改正法の成年後見の部分は、公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。施行の日までは、今の制度が使われます。具体的な日は、法務省の発表を確認してください。
親の名義のままの家があります。いつまでに何をすればいいですか?
2024年4月より前に始まった相続で登記をしていない場合、申請の期限は原則として2027年3月31日です。相続人の確認や話し合いに時間がかかることもあるため、早めに法務局や司法書士に相談してください。
一人暮らしの場合は、いつから始めるべきですか?
近くに頼れる家族がいない場合は、早めの準備が特に大切です。緊急連絡先、医療・介護の希望、亡くなったあとの手続きを誰に頼むかを、専門家や自治体の窓口に相談しながら決めていきましょう。
終活にお金はかかりますか?
エンディングノートや連絡先の一覧、持ち物の整理など、費用をかけずに始められることも多くあります。遺言書の作成や専門家への依頼には費用がかかるため、事前に見積もりを確認してください。
途中でやめても、やり直せますか?
やり直せます。エンディングノートや家族への手紙・動画は、何度でも書き直し、撮り直しができます。遺言書も、新しく作り直すことができます。
おわりに
おわりに
終活の始めどきに、年齢の正解はありません。大切なのは「いつから」よりも、「期限のあるものから、取りこぼさないこと」です。

終活は、終わりの準備というより、これからの時間を安心して過ごすための準備です。完璧を目指さず、今日、紙に三つ書き出すことから始めてみてください。
ご相談
気持ちを残す部分は、
一人では進めにくいものです
IDALLIANCEは、企画・撮影・編集までを手がける映像制作の会社です。家族に向けたメッセージを動画で残したい、何を話せばいいか分からない、という段階からご相談いただけます。ご依頼を決める前のご相談だけでも、お気軽にお問い合わせください。
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